適切なモータの選定は、医療機器から産業機器まで精密な制御が求められる製品開発において、製品性能を左右する重要な要素です。しかし「モータにはどんな種類があるのか」「自社の用途に最適なモータはどれなのか」と悩まれる技術者の方も多いのではないでしょうか。

モータは動作原理や構造によってさまざまな種類に分類され、それぞれ異なる特性と適した用途があります。

本記事では、初心者の方にも分かりやすく小型精密モータの主要な種類を解説し、選定時のポイントやカタログで使用される専門用語についてもご紹介します。タキロンシーアイ株式会社が提供する高性能な小型モータ製品についても触れますので、ぜひご検討ください。

小型精密モータの主要な種類と特長

小型精密モータは、医療機器や光学機器など高度な制御が求められる分野で使用されています。DCモータ（直流モータ）を中心に、ブラシ付きモータ、ブラシレスモータ、コアレスモータといった代表的な種類について、それぞれの構造と特徴を見ていきましょう。

このセクションで解説する内容

• ブラシ付きDCモータの基本構造
• ブラシレスDCモータの特長
• コアレスモータの独自性

各モータの動作原理、メリット・デメリット、適した用途を理解することで、製品開発における適切な選定判断が可能になります。

ブラシ付きDCモータは、もっとも基本的なモータ構造の一つです。ブラシと整流子によって電流の方向を機械的に切り替えることで、回転を生み出します。構造がシンプルであるため、製造コストを抑えやすく、制御回路も比較的簡単に設計可能です。コスト重視の用途や小規模な試作開発において選ばれるケースがあります。

一方で、ブラシと整流子が物理的に接触しながら回転するため、摩耗が避けられません。使用時間が長くなるとブラシが消耗し、定期的な交換やメンテナンスが必要になります。また、接触部分で火花が発生するため、電気的ノイズが生じやすく、周辺の電子回路に影響を与えるおそれもあります。連続運転や長寿命が求められる用途では、これらを考慮した設計が必要です。

ブラシレスDCモータは、ブラシと整流子を持たない構造が特徴です。電流の切り替えを電子回路で制御するため、物理的な接触部分がなく、摩耗による寿命制限がほとんどありません。これにより、メンテナンスフリーで長期間安定した動作が可能になります。

ブラシレスDCモータの主な特長は以下のとおりです。

※駆動、負荷条件により異なります。
 

産業用ポンプ、セキュリティ機器、冷却ファンなど、長時間動作する製品で広く採用されています。ブラシレスDCモータが、バッテリー駆動の機器や連続運転をおこなう機器、静粛性が必要な環境での機器などに選ばれる要因です。

コアレスモータは、鉄芯を持たない独特な構造により、ほかのモータにはない優れた特性を実現しています。鉄芯がないため、コギングトルク（回転時に発生する微細な引っかかり）がほとんど発生せず、極めて滑らかな回転が得られます。また、慣性モーメントが小さいため、高速応答性に優れ、素早い起動・停止が可能です。

医療用内視鏡のレンズ駆動、光学機器のフォーカス制御、精密ポンプなど、高精度な制御が求められる用途で特性を発揮します。振動が少なく静粛性にも優れているため、患者の安全性や機器の安定動作が重視される医療分野でも高く評価されています。コアレスモータは、製品の性能向上と信頼性確保を両立できる選択肢として、多くの技術者から注目されている製品です。

用途別モータの選び方と選定ポイント

モータを選定する際は、使用環境や求められる性能、コストなど複数の要素を総合的に判断する必要があります。医療機器、産業用工具、光学機器、セキュリティ機器など、用途ごとに求められるモータ特性は大きく異なります。

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• 医療・精密機器向けの選定ポイント
• 産業用機器・工具向けの選定ポイント
• セキュリティ・安全機器向けの選定ポイント

トルク、回転数、電圧、消費電力といった基本スペックの見方や、カタログに記載される専門用語（コギングトルク、応答性、効率など）を理解することで、実務での最適な選定が可能です。

医療機器では患者の安全性と高精度な制御が最優先され、内視鏡やポンプなどの医療用途では、コギングトルクの少なさが特に求められます。コギングトルクとは、モータが回転する際に発生する微細な引っかかりや振動のことで、これが大きいと精密な制御が困難になり、患者への負担や機器の不具合につながるおそれがあります。

医療・精密機器向けモータ選定で重視される主な要素は以下のとおりです。

医療機器では瞬時の動作変更や細かな位置調整が求められるため、指令に対して素早く反応できるモータが選ばれます。さらに、長期的な信頼性も欠かせません。医療現場では機器の故障が患者の安全に直結するため、メンテナンス頻度が低く、長時間安定して動作するモータが評価されます。これらの要件を満たす選択肢として、コアレスモータやブラシレスモータが多くの医療機器メーカーで採用されています。

電動工具やバッテリー駆動機器では、高トルクと軽量化、長寿命が同時に求められます。作業現場で使用される電動ドライバーや釘打ち機などでは、十分な力を発揮しながらも作業者が長時間持ちやすくするため、小型モータ採用による軽量化が必要です。モータ単体で必要なトルクを得られない場合は、ギアードモータ（モータとギアヘッドが一体化された製品）の活用により回転数を下げてトルクを増やせます。

産業用機器・工具向けモータ選定の主なポイントは以下のとおりです。

タキロンシーアイでは、モータとギアヘッドが最適にマッチングされた状態のギアードモータを提供しており、最適な組み合わせを検証済みです。

平歯ギアはシンプルな構造でコストを抑えられる一方、遊星ギアはコンパクトで高い減速比を実現できるため、小型化が求められる用途に適しています。これにより、モータ単体では実現困難な出力特性を確実に得られ、製品の信頼性向上につながります。

電子錠やガス検知器などのセキュリティ・安全機器では、低電圧起動と省電力、長寿命が選定の中心となります。これらの機器は多くがバッテリー駆動であり、頻繁な電池交換はユーザーの負担となるため、できるだけ長期間動作するモータが求められます。

セキュリティ・安全機器向けモータ選定の主なポイントは以下のとおりです。

タキロンシーアイのマイクロモータには、最低1.0Vという極めて低い電圧でも起動可能なモデルがあり、電池式機器に最適です。電池の電圧が低下してきた状態でも確実に動作できるため、電池寿命を最後まで有効活用でき、交換頻度を減らせます。

安全機器という性質上、故障が許されないため、高い信頼性と長寿命を備えたモータ選定が製品価値を左右するでしょう。

タキロンシーアイのマイクロモータ製品と技術的強み

タキロンシーアイ株式会社は、小型・高性能なマイクロモータの開発・製造を手がけ、医療機器、産業機器、光学機器など幅広い分野で採用されています。同社が提供するコアレスモータ、ブラシレスモータ、ギアードモータ、エンコーダは、それぞれの用途に最適化された高い技術力が評価されています。

このセクションで解説する内容

• コアレスモータの特長と適用分野
• ブラシレスモータの特長と適用分野
• ギアードモータ・エンコーダの役割

国内設計・徹底した品質管理による高い信頼性、お客様の用途に合わせたカスタマイズ対応、開発段階からのサポート体制、小ロットから量産までの柔軟な対応力など、同社ならではの強みが製品開発を力強く支えます。

タキロンシーアイのコアレスモータ（φ4～φ22）は、鉄芯を持たない独自の構造により、コギングがなく滑らかな回転と高速応答を実現しています。鉄芯がないため、慣性モーメントが小さく、起動から停止までの反応速度が極めて速いことが特長です。わずかな指令の変化にも瞬時に対応できるため、精密な位置決めや速度制御が求められる用途で威力を発揮します。

医療用内視鏡では、体内での微細な動きを正確に制御する必要があり、コギングレスで滑らかな回転が患者の安全と検査精度に直結します。光学機器のレンズ駆動においても、振動のない滑らかな動作がピント精度や画質向上に貢献します。さらに、精密ポンプや分析装置など、微量な液体や試薬を扱う機器では、安定した流量制御が可能です。タキロンシーアイのコアレスモータは、高精度が求められる現場で確かな実績を積み重ねています。

タキロンシーアイのブラシレスモータ（φ10～φ17.4）は、長寿命でメンテナンスフリー、振動や音を小さく抑えることができる特長があります。ブラシと整流子を持たない構造のため、摩耗による性能低下がほとんどなく、長期間にわたり安定した動作を維持可能です。これにより、頻繁なメンテナンスが困難な環境や、連続運転が求められる用途で高い評価を得ています。

産業用ポンプでは、長時間稼働するラインでも安定した性能を発揮し、生産効率の向上に貢献します。セキュリティ機器では、電子錠やアクセス制御システムなど、確実な動作が求められる場面では信頼性を高めます。さらに、冷却ファンや空調機器など、静粛性が求められる用途では、振動や音が少ない特性が大きな利点です。タキロンシーアイのブラシレスモータは、長寿命と高い信頼性により、製品のライフサイクルコスト削減にも寄与します。

タキロンシーアイのギアードモータ（φ12、φ16、φ22）は、モータとギアヘッドを最適にマッチングした製品として提供します。ギアードモータは回転数を下げてトルクを上げるために使用され、モータ単体では実現困難な出力特性を確実に得ることが可能です。平歯ギアと遊星ギアを用途に応じて選択でき、最適な組み合わせを検証済みであるため、開発期間の短縮と性能の安定化につながります。

さらに、エンコーダは、モータの位置・速度の正確なフィードバックを可能にする装置です。エンコーダを組み合わせることで、より高度な制御が実現でき、ロボットアームの精密な動作制御や、工作機械の位置決め精度向上など、幅広い用途での活用が期待されています。

タキロンシーアイは、モータ単体だけでなく、システムとしての価値を提供することで、お客様の製品開発を総合的にサポートします。

まとめ

小型精密モータの種類は多岐にわたり、ブラシ付きモータ、ブラシレスモータ、コアレスモータなど、それぞれ異なる特性と適した用途があります。製品開発において最適なモータを選定するには、使用環境や求められる性能、コストなどを総合的に判断することが必要です。

医療機器ではコギングトルクの少なさと高精度な制御、産業用工具では高トルクと軽量化、セキュリティ機器では低電圧起動と省電力といったように、用途ごとに重視すべきポイントは異なります。カタログに記載されるスペックや専門用語を正しく理解し、自社製品の要件に合致するモータを見極めることが、製品性能を最大限に引き出す決め手です。

タキロンシーアイ株式会社では、コアレスモータ、ブラシレスモータ、ギアードモータ、エンコーダといった高性能な小型モータ製品を取りそろえ、医療、産業、光学、セキュリティなど幅広い分野での実績があります。国内設計・徹底した品質管理による高い信頼性と、お客様の開発段階からのサポート、用途に合わせた柔軟なカスタマイズ対応が強みです。最適にマッチングされたギアードモータにより、モータ単体では実現困難な出力特性を確実に得ることができ、小ロットから量産まで柔軟に対応します。

モータ選定でお悩みの際は、製品の信頼性向上と開発期間の短縮を実現するパートナーとして、サポートいたします。

製品情報・お問い合わせ

タキロンシーアイのマイクロモータ製品については、以下のウェブサイトで詳細をご覧いただけます。

• 製品サイト：https://cik-ele.com/
• コアレスモータ：https://cik-ele.com/products/list/coreless_motor/
• ブラシレスモータ：https://cik-ele.com/products/list/brushless_motor/
• ギアードモータ：https://cik-ele.com/products/list/gearhead/
• エンコーダ：https://cik-ele.com/products/list/encoder/

お客様の製品開発における小型モータ選定でお困りの際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。技術担当者が用途や要件をヒアリングし、最適なソリューションをご提案いたします。

• お問い合わせ：https://cik-ele.com/contact/