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コアレスモータとは?仕組みとメリット、産業用途での活用事例を徹底解説

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精密な制御性能と高効率が求められる産業機器の開発において、モータ選定は製品の性能を左右する決定的な要素となります。近年、医療機器や光学機器、セキュリティ機器など、小型化と高精度化が求められる分野でコアレスモータが注目を集めています。

コアレスモータは鉄芯を持たない独自の構造により、従来のモータでは実現が難しかった滑らかな回転と高速応答性を両立しました。

本記事では、コアレスモータの基本的な仕組みから産業用途における具体的なメリット、実際の活用事例まで詳しく解説します。製品開発におけるモータ選定の参考として、ぜひご活用ください。

 

 

コアレスモータとは?基本構造と動作原理

コアレスモータの基本構造と動作原理について解説します。鉄芯を持たない独自の構造により、コギングトルクを大幅に低減し、滑らかな回転を実現する仕組みを説明します。

このセクションで解説する内容

  • コアレスモータの基本構造
  • 一般的なモータとの構造上の違い
  • 動作原理とコギングレスの仕組み

以下では、それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

 

コアレスモータの基本構造

コアレスモータは、鉄芯を使用せずコイルを円筒形または平板形に巻いた構造を採用しています。一般的なDCモータではロータ(回転子)の中心に鉄芯が配置されますが、コアレスモータでは鉄芯を省略したコイルのみの構造です。

鉄芯がないことでロータ部分が大幅に軽量化され、慣性モーメントが小さくなります。この特性により、起動時や停止時の応答性が向上し、高速で正確な制御が可能です。円筒形コイルは永久磁石の内側または外側に配置され、磁界の中で回転する仕組みとなっています。

 

一般的なモータとの構造上の違い

鉄芯をもつ一般的なDCモータと比較すると、コアレスモータにはいくつかの構造上の明確な違いがあります。以下の表で主な違いを整理しました。

項目一般的なDCモータコアレスモータ
ロータ構造鉄芯あり鉄芯なし(コイルのみ)
コギングトルク発生するほぼ発生しない
ロータ重量比較的重い軽量
慣性モーメント大きい小さい
応答性標準的高速応答
鉄損ありなし
効率標準的高効率

もっとも大きな違いは、ロータに鉄芯が存在しない点です。一般的なモータでは鉄芯が磁束を効率的に集めるために使用されますが、同時に磁気的なムラ(コギングトルク)を発生させます。

コアレスモータは鉄芯を省くことで、磁気的なムラをほぼ完全に解消しました。また、鉄芯がない分だけロータの重量が軽くなり、慣性モーメントが小さくなります。さらに、鉄芯による鉄損がないため、効率的な動作が実現されています。

 

動作原理とコギングレスの仕組み

コアレスモータがコギングトルクを発生させない理由は、鉄芯がないことに起因します。一般的なモータでは、鉄芯と永久磁石の間に磁気的な吸引力が発生し、回転位置によってトルクが変動するコギングが生じます。

コアレスモータではコイルのみが磁界中を回転するため、この磁気的な吸引力が発生しません。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って電磁力が発生し、滑らかな回転トルクが得られます。磁束の流れが均一であるため、回転ムラがほとんどなく、極めて精密な速度制御や位置決めが可能となりました。

 

 

コアレスモータの5つのメリットと産業機器への応用

コアレスモータが産業機器に採用される理由となる5つの主要なメリットについて詳しく解説します。

このセクションで解説する内容

  • メリット1:コギングレスによる高精度な制御
  • メリット2:高速応答性と起動性能
  • メリット3:小型設計による機器の省スペース化
  • メリット4:低消費電力とバッテリー寿命の延長
  • メリット5:長寿命と高い信頼性

これらの特性が、それぞれどのような用途で価値を発揮するのかを具体的に説明します。

 

メリット1:コギングレスによる高精度な制御

鉄芯がないことでコギングトルクがほとんど発生せず、極めて滑らかな回転が得られます。回転ムラが最小限に抑えられるため、速度制御や位置決めの精度が飛躍的に向上します。

医療機器における輸液ポンプや人工呼吸器では、流量の微細な調整が患者の安全に直結しており、高精度な制御が不可欠です。コアレスモータの滑らかな回転特性により、正確な流量制御が可能です。

光学機器のレンズ駆動では、わずかな振動も画質劣化の原因となりますが、コギングレスの特性により高精細な映像品質を維持できます。

 

メリット2:高速応答性と起動性能

軽量なロータ構造により慣性モーメントが小さく、素早い起動と停止が可能です。回転開始から目標速度に到達するまでの時間が短縮され、制御の遅延を最小限に抑えられます。

デジタルカメラのオートフォーカス機構では、被写体を捉えた瞬間に高速でレンズを駆動する必要があり、応答性が求められます。コアレスモータの高速応答性により、シャッターチャンスを逃さない正確なピント合わせが可能です。

産業用ロボットのサーボ機構でも、瞬時の動作切り替えが求められる場面で、この特性が生かされています。

 

メリット3:小型設計による機器の省スペース化

鉄芯を省いた構造により、モータ自体の小型化を実現します。同等の出力を維持したままスペースを削減できるため、製品全体の設計自由度が向上します。

携帯型医療機器では患者の負担軽減のため、小型化が欠かせません。コアレスモータの採用によって、必要な性能を確保しながら機器全体のサイズや重量を抑えられます。

ハンディ工具でも、作業者の疲労軽減や操作性向上に寄与し、作業効率の改善につながります。限られたスペース内に複数の機能を集約する電子機器において、コアレスモータの小型設計は大きな強みです。

※鉄芯が無いことでロータを軽量化出来ても、モータ全体として軽量化出来ない可能性もあります。

 

メリット4:低消費電力とバッテリー寿命の延長

高効率設計により消費電流が抑えられ、バッテリー駆動機器の長時間動作が可能です。鉄芯による鉄損がないため、投入した電力が効率的に回転力へ変換されます。

電子錠やスマートロックでは、頻繁な電池交換はユーザーの利便性を損ないます。コアレスモータの低消費電力特性により、一般的には1回の電池交換で半年~1年間の動作が可能です。

携帯型セキュリティ機器でも、長時間の連続監視が求められる場面で、バッテリー寿命の延長は運用コストの削減に直結します。省エネルギー性能は、環境負荷低減の観点からも評価されています。

 

メリット5:長寿命と高い信頼性

機械的摩耗が少なく、長期間安定した性能を維持します。鉄芯を持つ一般的なモータと比較して、コアレスモータでは軽量なロータによりベアリングへの負荷を軽減できます。また、回転部分の慣性モーメントが小さいため、起動・停止時の機械的ストレスも低減可能です。

医療や安全機器など、故障が許されない用途において、高い信頼性が求められる場面で採用されています。産業用ガス検知器では、危険環境下での連続稼働とメンテナンス頻度の最小化が必要です。コアレスモータの長寿命特性により、安定した動作が長期間保証され、システム全体の信頼性向上に貢献します。

 

 

コアレスモータの産業用途と活用事例

コアレスモータが実際にどのような産業分野で活用されているのか、具体的な用途と事例を紹介します。

このセクションで解説する内容

  • 医療機器分野での活用
  • 光学機器分野での活用
  • セキュリティ・安全機器分野での活用
  • 産業用工具・機器分野での活用

各分野における具体的な用途と、コアレスモータの特性がどのように製品性能の向上に貢献しているかを解説します。

 

医療機器分野での活用

内視鏡のポンプ駆動や医療用ロボットの関節部など、患者安全のために高精度で安定した動作が求められる医療機器において、コアレスモータの高い制御性と信頼性が評価されています。

輸液ポンプでは、薬液の流量を正確に制御する必要があり、わずかな回転ムラも許されません。コアレスモータのコギングレスな特性により、一定流量を安定して維持できます。

人工呼吸器においても、呼吸補助の精密な制御が患者の状態に直結するため、高精度なモータ性能が不可欠です。また、携帯型医療機器では小型軽量化が求められ、コアレスモータの省スペース設計が製品開発を後押ししています。

以上の様に、医療機器の駆動部に適したモータの一つとして、使用される場合があります。

 

光学機器分野での活用

デジタルカメラのオートフォーカス機構や手ブレ補正、顕微鏡のレンズ駆動など、微細な振動を嫌う光学機器において、コギングレスの滑らかな回転特性が高画質化に貢献しています。

カメラのオートフォーカスでは、被写体を素早く正確に捉える必要があり、高速応答性が求められます。コアレスモータの軽量なロータ構造により、瞬時のレンズ駆動が可能です。

手ブレ補正機構では、わずかな振動も画質劣化につながるため、コギングトルクがほとんど発生しないコアレスモータが最適な選択となります。

監視カメラのパン・チルト機構でも、滑らかな動作と静音性が広く評価されています。

 

セキュリティ・安全機器分野での活用

電子錠やスマートロック、携帯型ガス検知器など、低電圧駆動と長寿命が求められるセキュリティ機器において、省電力性と信頼性の高さが採用の決め手となっています。電子錠では電池駆動が一般的であり、頻繁な電池交換はユーザーの負担となります。コアレスモータの低消費電力特性により、一般的な電子錠では1回の電池交換で長期間の動作が可能です。

携帯型ガス検知器では、危険環境下での確実な動作が求められ、故障のリスクを最小限に抑える必要があります。コアレスモータの高い信頼性と長寿命特性は、このような用途で大きな価値を発揮します。

また、振動アラーム用途でも、小型で効率的なモータとして活用されています。

 

産業用工具・機器分野での活用

電動ドライバーやハンディ工具、小型ポンプなど、携帯性とパワーの両立が求められる産業用機器において、軽量で高効率なコアレスモータが製品の競争力向上に寄与しています。

バッテリー駆動の工具では、省電力性が作業時間の延長につながるため、高効率なコアレスモータの特性が生かされます。小型ポンプや搬送装置でも、コンパクトな設計と安定した動作が求められる場面で、コアレスモータが選択されています。

 

 

まとめ

コアレスモータは、鉄芯を持たない独自の構造により、コギングレスの滑らかな回転、高速応答性、小型軽量設計、低消費電力、長寿命といった多くのメリットを実現します。医療機器、光学機器、セキュリティ機器、産業用工具など、幅広い分野でその特性が評価されています。これらの特性により、製品の高性能化と差別化が可能です。

鉄芯がないことで発生するコギングトルクの大幅な低減は、精密な制御が求められる用途において特に価値を発揮します。医療機器での正確な流量制御や、光学機器での高精細な映像品質維持など、わずかな振動も許されない場面でコアレスモータの優位性は明確です。また、軽量なロータ構造による高速応答性は、オートフォーカス機構や産業用ロボットのサーボ制御など、瞬時の動作が求められる用途で不可欠な特性となっています。

小型軽量設計と低消費電力の特性は、携帯型機器やバッテリー駆動製品の開発において大きな強みとなります。電子錠やセキュリティ機器では、長期間の電池寿命が求められており、コアレスモータの省電力性が運用コストの削減に直結する特性です。さらに、機械的摩耗が少なく長寿命である点は、メンテナンスの頻度を最小限に抑え、故障が許されない用途での信頼性確保に貢献します。

 

タキロンシーアイ株式会社では、お客様の用途に合わせたコアレスモータのご提案から、カスタマイズ対応、試作段階からのサポートまで、トータルでお手伝いいたします。製品開発におけるモータ選定でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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